日本では既に20年以上の実績があり、MotoGPを始め、F1やWRC、ル・マン24時間レースなど耐久性を要求されるエンジンやトランスミッション、サスペンション部品などに広く採用されておりますが、ここアメリカにおいては2005年より WPC Treatment Co., Inc.社がカリフォルニア州トーランス市に工場をオープンし、アメリカでのWPC処理を開始いたしました。そこで弊社もWPC Treatment Co.,Inc.社に依頼してピストン・コンロッド・クランクシャフトの強化とフリクションの低減・シール性の向上を目的に必要に応じてWPC 処理を実施しております。
また、CP Pistons社でもオプションとしてこのWPC処理を広く採用しており、ピストンピンにおいてはWPC処理を施したものを一部カタログモデルとして既に標準化しております。
今回はそのWPC処理の基本情報をおさらいの為アップします。
★WPC 処理とは
"Wide Peening Cleaning / 幅広く打ち付けて清掃する" もしくは"Wonder Process Craft / 不思議な、驚くべき工程の特殊技術" の略で、WPC処理とは、 金属成品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させるという精密ブラスト技術です。つまり、金属表面処理の一種で、40~200ミクロンという非常に小さな 微粒子(ショット)を、被処理材料に対し高速(100m/sec以上)に噴射し、その粒子を衝突させる事により発生する熱で金属の表面を処理する事で、主に疲労強度の向上と摺動性の向上を目的としています。
★WPC 処理の効果
WPC 処理を実施すると、処理対象物の最表面で急熱・急冷が繰り返されることより、微細で靭性に富む緻密な組織が形成され、高硬度化して表面を強化すると同時に、表面性状を微小ディンプルへ変化させ潤滑性を向上させることにより、摩擦磨耗特性を向上させます。WPC処理可能な材質は、ギアなどの鋼、ピストンのようなアルミ及びアルミ合金、オイルポンプのような焼結合金、クランクシャフトのようなダクタイル鋳鉄、メタルのようなスズや鉛の合金、そのほか、チタン合金など金属であればほとんどがWPC処理可能です。 また、硬質クローム、TIN等のメッキ、窒化、浸炭などの表面処理の上にWPC処理を実施する事により相乗効果を発揮します。メッキ等の前処理としてWPC処理をすると、金属との密着性が上がりメッキの耐久性が向上します。 更に、固体潤滑剤ショットを用いる事により 、微粒子の成分元素を金属最表面に拡散・浸透メッキすると共に、表面を合金化させて強度を増すことが可能となり、チル化などにより作られた高硬度で脆い金属表面にも、更なる摺動姓を目的としてWPC処理をする事が可能となりました。
★WPC 処理の対象
現在はレースエンジン・車両関連機械部品以外にも、切削工具・金型等の強度と耐摩耗性、機能性を向上させる表面改質熱処理技術として、幅広い産業分野で利用されています。
★WPC 処理 特徴:
• 疲労強度の向上
• 耐摩耗性の向上
• ミクロディンプルによる摺動性の向上
• 金属表面硬度の向上
• 耐クラック性の向上
• 耐衝撃性の向上
• 各種皮膜との密着性向上
• 低温脆性の防止
• スカッフィング・フレッティングの防止
★WPC 処理 対象:
• ピストン、ピストンピン、ピストンリング
• クランクシャフト / ジャーナル(メイン、ピン)、プーリーボス他
• コンロッド、コンロッドメタル
• カムシャフト / ロブ、ジャーナル他
• ロッカーアーム、バルブリフター
• バルブスプリング、スプリングリテーナ
• バルブ
• トランスミッションギア、フォーク、シンクロ、スリーブ他
• デファレンシャルサイドギア、ピニオンギア、L.S.D.クラッチプレート
• クラッチカバー / プレート部
• ドライブシャフト、CVジョイント他
• ロータリーエンジン
/ アペックスシール、コーナーシール、エキセントリックシャフト他
• 切削工具、金型他
MKS Engineering では全ての機械加工部品に対しWPC処理を承っております。ピストン・コンロッド・クランクシャフトの納品に合わせ施工可能です。お見積りを作成いたしますので、お気軽にお申し付けください。
WPC処理サンプル写真
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